第一話:春の畑と初めての出会い
新日本国の広大な田園地帯。悠斗は朝露に濡れた畑で、農薬を最小限に抑えつつトマトを育てる。農薬は「正しく使えば安全」と信じ、土壌分析に基づく精密な散布を徹底していた。ある日、近くの集落で開かれる収穫祭の準備中、地元の料理人・葵が悠斗のトマトを手に取る。「このトマト、色が自然で美しいね。合成着色料なんて使わない私にぴったり」と葵は笑う。彼女は新日本国の理念に共鳴し、添加物を一切使わない料理を提供するレストランを営む。悠斗は彼女の真剣な眼差しに心を奪われるが、口下手で「ありがとう」としか言えない。収穫祭当日、葵は悠斗のトマトを使ったサラダを振る舞う。客の賞賛を聞き、悠斗は初めて自分の仕事が誰かの笑顔に繋がる喜びを知る。祭りの最後、葵が「またトマト、持ってきてね」とウインクすると、悠斗の心は春の風のように揺れた。
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